居待月

今夜は、居待月。
座ってゆっくりと待つ月と言う意味からだそうです。
帰り道、信号待ちの交差点の向こうに、ゆらりと月が
浮かんでいました。
昨日の夜見たのより大きくややオレンジがかって、
やさしげに浮かんでいました。


夏みかん酢つぱしいまさら純潔など   鈴木しづ子


ふと眼にした新聞の書籍刊行案内の欄でみつけました。
鈴木しづ子は伝説の女流俳人とも、娼婦俳人とも
呼ばれています。
この句はさきごろ出た句集の名前でもあります。
副題に『句集「春雷」「指輪」』とあり、二冊の句集を
一冊にしたものです。
いつごろ何で彼女の事を知ったのかは、定かではありませんが、
初めて彼女の句を読んだとき、正直、嫉妬と羨望を覚えました。


まぐはひのしづかなるあめ居とりまく   鈴木しづ子   

この句ともにずっと鈴木しづ子は私の心に時折あらわれては消えて、を
繰り返していました。
ほかの句をもっと読みたいと思いながらも、なかなか果たせませんでした。
そして、今、やっと句集を手にすることができました。


鉄臭にそまりゆく指火にかざす

対決やじんじん昇る器の蒸気

好きなものは玻璃薔薇雨駅指春雷

家すべて午前零時の露置けり

月明の汽車がちかづく柵に倚る

コスモスなどやさしくふけば死ねないよ

遊郭へ此の道つづく月の照り



ざっと読んで好きな句を書き抜いてみましたが、ほんの一部です。


鈴木しづ子、1919年、東京生まれ。
製図工となる。「樹海」主宰・松村虚湫の薫陶を受ける。
大学生、同僚などとの恋、結婚に破れ、岐阜でダンサーとなる。
米黒人兵と同棲・離別、1952年、自らの出版記念会を最後に
その消息を絶つ。

と、句集の帯に書いてあります。



死ぬときは一緒にゆれるコスモスだもの   玉

コスモスコスモスコスモスの道来て帰る   かなえ