目的は…

この、五月の連休に念願の「斜陽館」に行ってきた。
青森に住んでいながら「斜陽館」に行っていないことが、どこかうしろめたかった。
と言うことで、二泊三日の「津軽路ひとり旅」。
私の住んでいる町から「斜陽館」のある五所川原市金木町までは、東京へ行くのよりも遠い。
時刻表で乗り換えの電車を調べ、ネットでホテルの予約し、やっと当日。
幸い、お天気に恵まれ上々の旅になった。
金木町も「斜陽館」も思ったよりごちゃごちゃしてなくて、のんびりあちこち見ることができた。
まず、五所川原市に一泊。静かな町の静かな夜。
次の日は金木町の川柳社の大会があり、そちらに出席するのも今回の旅の目的のひとつだった。
句は、ほとんど作っていない。当然、結果は惨憺たるものだったが、大会でお会いしたみなさんは、
とても優しくて温かくて、来年も絶対に来ようと秘かに決意した。
そして、次の宿泊地青森市に移動。
青森に着いた時は、もうすでに暗かった。ホテルのチェックインを済ませ食事のために一旦外出。
その食事の帰り道のこと!
ホテルへの曲がり角にさしかかったその時、まさに裂帛の気合いともいうべき三味線の音が聴こえた。
どこから?誰?何これ?と音を頼りに夜の街を歩くと、交差点の向こうにその人は居た。
津軽三味線のストリートライヴ!
音色は透明で力強くて、やさしいくせにどこか痛みがあって…目を閉じて聴いた。
生まれてはじめて津軽三味線を聴いたように聴いた。
音楽の知識などなにもない私だが、その人の音色は他の誰とも違うと思った。
川柳に書きたいと願っているのだが、書けない。
書きたいのに書けないもどかしさが、旅の終わった今もある。


   目的はあなたにあった旅をした (時実 新子)