街の灯

ほうずきトマトという食べ物があります。
トマトと言うから多分、野菜かな。
かたちはほうずきそのもの。大きさはほうずきの3分の1くらい。
ちょうど今頃出回ります。
かさかさの袋(がくの育ったもの)に包まれていて、その袋をそっと破ると
中には愛くるしい小指の先ほどの実がちょこんと入っています。
色は薄いクリーム色だったり薄い緑だったり。
その実をきゅっと噛むと甘いのですが、果物の甘さともフルーツトマトの
甘さとも違い、どこか懐かしい切なくなる甘さです。
その甘さを確かめたくて、ついつい何個も食べてしまいます。
お腹を満たす食べ物ではありませんが、心がふっと充たされます。


今、「街の灯」を改めて読んでいます。
北村薫が第141回直木賞を受賞した「鷺と雪」に連なるシリーズの第1弾の作品集です。
このシリーズが雑誌に連載されたとき偶然、最初から読んでいました。
舞台は昭和7年、上流社会の令嬢が遭遇するさまざまの事件を通して、
その時代のありようが浮かびあがるという仕組みになっています。
登場人物は、主人公の令嬢のほかに、その令嬢の家のお抱え運転手として
雇われた、女性運転手がとても大きな存在で描かれています。
昭和7年から昭和11年までの物語です。
読んでいるうちに、昭和のあの暗い時代はまだ終わっていないのではないかと
思ったりもしました。


電柱が集まってくる星の駅   玉

静止画像 臨時列車が通ります   かなえ