十一月と

今日は、霰が降りました。
窓の外でパラパラ、バラバラ、コツンコツンと
白いものが次々に音を立てて降ってきて、
騒がしくも痛々しいようなひとときでした。
昨日、一昨日と小春日和のいい天気だったのに。
仕事の帰りに、バスを待っているときの風は、
すっかり冬の冷たさでした。


昨日は、またまた急に思い立って一戸町の広全寺にある
三浦哲郎さんのお墓参りをしてきました。
画像は、その広全寺の山門です。
一戸町は、この街から電車で一時間ほどのところにあります。
お寺までは、駅から歩いて25分くらいかかるとのこと。
寒くなかったので歩いてみたのですが、途中でお腹が
空いたので、何か食べようとお店を探したところ、
それらしきお店がちっとも見当たりません。
道行く人に聞いたところ、少しもどったところに
ショッピングセンターがあって、どうやらそこしか
食事をするところが無いということです。
15分ほど歩いた道をまた戻っていたら、偶然出会って
しまいました。

「しのぶ橋」。もちろん「忍ぶ川」にちなんだものです。
平成20年に架けられたものとあり、この字も、三浦哲郎さんの
手によるものだそうです。

こういう川に架かっています。
それにしても、お腹が空かなければ来なかった道です。
なんだか、嬉しい一日になりそうと喜びました。
ショッピングセンターで無事食事を済ませ、時間配分を
考えて、タクシーでお寺まで行くことにしました。
タクシーには10分も乗ったでしょうか。
いよいよ目的の広全寺です。
でも、お墓の場所がわかりません。


少し、境内を歩いてみました。

本堂です。人気がなくて静かでした。

鐘楼が堂々としています。


広全寺は、少し小高いところにありました。
思った以上に広い墓地です。
こうなったらカンです。
新しい卒塔婆を目当てに歩いてみましたが、やっぱり無理。
それに、見知らぬ墓地を歩くのもなんだか気が引けます。
また境内に戻って、お地蔵さまにお賽銭をあげたりしながら
拝んでいるうちに、心が落ち着きました。
解らないことは聞けばいいのです。
お寺の庫裡に行ってお願いすればいいのです。
「私は八戸からきました。三浦哲郎さんのファンです。
お墓参りをさせていただきたいのですが、宜しいでしょうか?」
ご住職さんは快く承諾してくださって、その上お寺の方にお墓に
案内までしてもらうことができました。
お墓には、すでに誰かがお参りしたのでしょうか、
お花とお菓子などのお供えものがありました。
私も、お線香とお水、それにせんべの耳を持ってきたので
それを供えました。墓地はとても静かでした。
本当にお墓のみなさんは眠っていらっしゃるのだと
思うような静けさです。
実は、お墓の写真も撮ったのですが、ここに載せるが
なんだか憚れるのです。
静かで優しかった時間と空間が伝わればと思っています。

帰るときにご住職さんに、三浦哲郎さんのエピソードを
少しお聞きすることができました。
ご住職さんは90歳くらいと聞いています。
どうか、お元気でいてください。

こちらは、三浦哲郎さんの文学碑です。

お寺の帰り道見かけた紅葉。
私にとって、今年一番の紅葉でした。


さて、今日の川柳作家全集は赤松ますみさんです。
まず、好きな句です。
ますみさんは、555句の掲載です。
選びきれるものではありませんので、一部ということに
してください。


いらっしゃいませ 三日月のドアひらく

フランスがくるくる回る理髪店

逆らえないよ苺の赤というだけで

ざぶとんが並ぶと一揆かと思う

つらそうなところにつけるアップリケ

いざとなったら開ける缶詰のお城

泣かせてくれるじゃないのたっぷりのリボン

透き通るいったん銀になってから

橋桁はしぐれの色でできている

リボン結びのところかゆくてたまらない

むらさきも黒も仲間にしてしまう

砂浜で難儀なモノにひっかかる

千両箱に黙ってつけておく指紋

美しい曲がり具合になってゆく



ますみさんの句は、都会的でおしゃれだという定評があります。
でも、もちろんそれだけではないですよね。言葉から発せられる
色やかたちが豊富で、読む者をあちこちに連れて行ってくれます。
その自在さは、ますみさんの経験値によるものだと思っています。
句を読んでいると句と句の間から声が聞こえてくるのです。
『いいやん、さ、呑も♪』
お酒に弱い私ですが、ますみさんはススメ上手です。



桜散る頃そっとたずねる墓がある   玉

お墓参りさせていただく木の葉ずれ   かなえ