十一月に

今日は、雲の多い一日でした。
一昨日あたりを境にして、季節は晩秋から
初冬です。空気からすっと、暖かさが抜けました。
風がガラスの冷たさで吹いています。
これからの季節を思うと、わかってはいても
うつむきがちになってしまうです。
今日の画像は、そんな俯いたときの一枚です。
踏まれる落ち葉に妙に心魅かれてしまいました。


今日は仕事の帰りに娘と映画を観てきました。
かもめ食堂」。再上映のため千円でした。
先日、娘が一人で観てきて随分気に入ったようで、
珍しく「もう一度観たいんだけど、お母さんも行かない?」と
誘われました。全体に淡い水彩画の印象を受けました。
謎の多い映画です。
なぜ、北欧のヘルシンキでおにぎりがメインメニューの
食堂なのか。もたいまさこの演じる旅人の
「わたしの荷物はまだ見つかりませんか」と電話をかけている
相手は誰なのか。片桐はいりの役どころもまた、
唐突な旅人です。どこかへ行きたくなって目を瞑って
地図を指差したところがヘルシンキだと言うのですから。
主役の小林聡美が、ときどきプールに浮かぶ場面も
非現実的です。プール=羊水を彷彿させられるのですが、
そう思ってはいけないような雰囲気もあります。
観ているうちに、そうだったのかと言うエピソードが
ちょこちょこ語られるのですが、それもどこか曖昧です。
そのくせ、しんみりしたものを投げかけてくるのです。
訳なんて考えずに、出てくる料理や北欧の景色を楽しめば
それでいいのでしょうが、何かもうひとつ答えが欲しかった気が
しています。
ただ、おにぎりを食べるシーンで、確かに海苔の匂いと
ごはんとその塩かげんが口中に広がりました。
娘も、それはしきりに言っていました。
私は、おにぎりもそうですが、シナモンロールのほうが
食べたくなりました。

こちらの画像は大好きな秋明菊です。
秋の花では、コスモスよりも好きかもしれません。

こちらは、この地方ではあまり見かけない彼岸花です。
どちらも通りすがりに見かけて撮りためていたものですが、
遅ればせながら載せてみました。

新葉館出版から、今年「川柳作家全集」が刊行されました。
全国の現代川柳作家百人による全集です。
そのうちの何人かの方から送っていただいていました。
お礼の手紙もちゃんと書けないでいて、大変申し訳ありませんが、
少しずつ、ここでその作品を紹介させてください。


今日は、岩手のあべ和香さんです。


鰹一本さあわたくしが試される

風船かずらあの子この子の行方など

人形へ眉描き音もたてぬ日よ

正直な音だ ひづめの四拍子

贈られた花束邪魔なこともある

予知能力やはりなかったわたしの血

長過ぎる三寒四温花こぶし

ほおづえの風はむらさき吾亦紅

レタスなどちぎり退院後の笑顔


和香さんのきりりとした横顔、やんわりした笑顔が滲んできます。
素直な気持ちにさせられる句に、小春日の匂いがあります。

こちらの画像もやはり通りすがりの秋の一枚。



窓越しの市場に残るバナナ船   玉

花の市絵本を歩くように抜け   かなえ