月を見ながら

そろそろ満月でしょうか。
9時頃に見た月はくっきりとそのかたちを現していましたが、
さっきの月は薄い雲の下に透けて、いささか儚げでした。
もの心つくかつかないかの頃、月は自分と自分のまわりの人にしか
見えないものだと思っていました。
それから少し経った頃、月はそれぞれの町に一個ずつあるのだと
思っていました。
世界がとても狭くていつも自分中心だったのですね。(笑)
いつからでしょうか。
月がたったひとつしかなくて、みんながそのひとつの月を
見ているのだと知ったのは…。
子どものころ読んだのでうろ覚えなのですが、
アンデルセンの「絵のない絵本」と言う童話があります。
若く貧しい絵描きの窓辺に月が来て、月が見てきた地球上の
あらゆる国の話を聞かせてくれます。
絵描きはそれを絵にします。
もちろん幸せなお話ばかりではありません。
むしろ、月の光があたって初めてその情景が浮かび上がるような、
そんな話が多かった気がします。
「絵本」とありますが、絵はなかったです。
月の話してくれるお話ばかりの本でした。
子供のころはそんな童話がちょっとつまらなかったのですが、
ただ、月は自分が見ているだけでなく、月も自分を見てくれているのだと
思って、どこか安心したのを憶えています。


今日はりんごを食べました。
津軽」と言う品種です。
「つがる」とひらがなで書かれたりすることもありますが、
このあたりのお店ではほとんど「津軽」の漢字表記です。
いまごろの季節、店頭にあふれんばかりに並びます。
津軽」の果肉はやわらかくて酸味も甘味も少し物足りない感じですが、
それでも、秋の果物には欠かせません。
「千秋」と言うりんごも、もうじき出回ります。
そう言えば「茜」と言う赤くて、想像しただけで口中に唾が湧いてくる
酸っぱいりんごもありますが、最近はあまり見かけなくなりました。
あの酸っぱさ、けっこう好きだったのですが。
津軽」を食べながら、今夜の月を齧ったらこんな味だろうかと、
またまた思ったりしました。


冷凍庫の羽をときどき確かめる   玉

ノブのないドア 水のない水たまり   かなえ