弘前へ 前篇


ここ何日かは、久しぶりにプラス気温の日。といっても
プラス1℃とか3℃なんだけど、充分暖かく感じられた
数日でした。諸々のことが滞りなく終わり、
まずは平和に日々が過ぎています。


土曜日、日曜日と弘前へ行ってきました。
新春川柳大会です。
何から書こうかと悩むほど、いろんなことが
ありました。
一度では書ききれないほど、たくさんの出会いが
ありました。
ですから、前編と後編に分けて書くことにしました。
どうぞ、よろしくお付き合いください。
土曜日、この街はとても晴れていい天気でした。
また、新幹線で行こうと思ったところが、
トラブルのため、東北新幹線全線不通というニュースです。
川柳の友達がメールで知らせてくれました。
新幹線を諦めて、のんびり青い森鉄道で青森まで。
青森から奥羽本線に乗り換えて弘前まで。
ところが途中、ものすごい吹雪。
去年も確か吹雪だったと思いながら、窓の外を見ていると、
だんだん雪が止んできて、弘前に着いたときは、すっかり
晴れて、ほっと安心。


最初の画像が弘前の駅前の様子。
「りんごの風」というモニュメントが目立っています。
あれこれ写して、ひとまずホテルへ。
夕方6時からは、弘前川柳社の方々と夕食会です。
メンバーは、千島鉄男さん、高瀬霜石さん、夫人のゆきこさん、
松山芳生さん、濱山哲也さん、角田古錐さん、吉田州花さん、
守田啓子さんと私そして宮城県から、真田義子さん、
大山蓮華さん、丸山あずささんとニコ。

こちらがそのときの献立。
弘前の美味しさがぎゅっと詰まったお弁当。
このほかにご飯とお味噌汁がついて、お腹がいっぱいに
なりました。お腹がいっぱいになったところで、
いったん解散。そして、いよいよ夜の弘前の街へ繰り出しました。
実は、この夜のお遊びが今回の一番のお楽しみでした。
去年の大会の前夜にお願いして連れていってもらったのが、
もう、楽しくて楽しくて。
今年、連れて行ってもらったのは、「山唄」という
津軽三味線のライヴが楽しめるお店です。
「山唄」には、福士慕情さんと関野艸太郎さんが待っていて、
そこに、州花さん、啓子さん、古錐さん、芳生さん、哲也さん、
義子さんと私の夜更かし組が行ったというわけ。
生の三味線を聴くのは、獅士丸さんのとき以来。
津軽民謡あり、オリジナルあり、ソロ演奏あり合奏ありの
盛沢山なステージでした。

こちらがそのステージの様子。
中ほどの貫禄のある女のひとは福士りつさんと言って、
女性では第一人者ということです。

こちらの女性はやはり第一人者だった亡き山田千里さんの
娘さんだということです。撥さばきも糸を押さえる指も力強くて、
やはり、DNAを感じましたね。
小一時間ほどのステージを、たっぷり堪能しました。
食事をすませてきたのですが、せっかくだから津軽の名物を
少しつまむことにしました。

こちらが、あの「けの汁」です。ふきやわらびの山菜、こんにゃく、
ごぼうなどの野菜を賽の目に切って味付けはお味噌。
実家でも食べたことがあるのですが、また違う味でした。

こちらは貝焼き味噌。慕情さんが注文したものをちょっと拝借。
私の知っているのと違って豪華です。
ほたてなんか入っていて玉子でとじてあります。
ご飯にもお酒のおつまみにも合いそう。
この器は大きなほたての貝です。
これがこの料理の特徴。
どっちもしみじみ美味しかったです。
なんというか、津軽ソウルフードですね、きっと。
津軽三味線の次はシャンソンです。
去年初めて連れていってもらって一度で魅了させられた
秋田漣さんのお店へ。
お酒を飲みながら、ピアノの弾き語りで漣さんの唄を
聴けるのです。
去年と同じように、いいえ、去年よりも圧倒されました。
一年という時間の積み重ねは、漣さんの声にまた深みを
与えたのではないでしょうか。
しっとりと肌から染み込んでくるようでした。

秋田漣さんです。

ごめんなさい。手が震えました。
もし、ここをお読みの方で、弘前へ行かれる方がいらっしゃいましたら、
是非、漣さんのお店にお立ち寄りなさることをお勧めいたします。
シャンソンは、大人の音楽です。
なにもかも受け入れてくれて、許してくれて、自分が自分で
いられることに感謝できる、そんなひとときをシャンソン
与えてくれるのではないかと思っています。
そういう風に教えてくれる漣さんの唄声なんです。
今年初めて行った啓子さんは、三味線のときから頬を
紅潮させていましたが、ここではさらに感極まった横顔
だったのが、とても印象的でした。
夜のお世話をしてくださった、慕情さん、芳生さん、哲也さん、
艸太郎さん、本当にありがとうございました。
氷点下の弘前がちっとも寒くなくて、心も
体もほっかほかに過ごすことができました。
弘前がまたまた大好きになりました。
そんなこんなで、ホテルに戻ったのは、12時を
過ぎていました(笑)。



あずささんとニコのことを少し話させてください。
今回の大会に宮城県からいらした丸山あずさんは全盲だそうです。
ニコは盲導犬です。大山蓮華さんは、ボランティアで
あずささんのつきそいでいらしゃいました。真田義子さんも
ご一緒にいらっしゃいました。
三人とも川柳を書かれます。
あずささんは、霜石さんの句に惹かれて弘前に来たそうです。
宮城から新幹線で。その日は新幹線のトラブルでダイヤが
とても乱れました。予定の時間を大幅にオーバーしたのに
関わらず、みなさんとても明るく元気に到着なさいました。
夜の食事会の時に初めて会ったのですが、霜石さん以外
初対面にも関わらず、すぐに打ち解けることができました。
何より、ニコです。初めての場所でも声を出すこともなく、
誰に対しても親しげな眼を向けてくるのです。
私はニコを抱きしめてしまいました。
純粋であどけなくてやわらかいまなざしに、
堪らない気持ちになりました。
ニコはニコニコのニコだそうです。
まさに、そんなそんな存在のニコです。

ニコです。

カメラを避ける仕草しているのに、無理させてごめんね。



弘前の川柳誌「林檎」に載っていたあずささんの句を
紹介させてください。


海鳴りを聴いて心を鎮めます

うれしいなほっぺをつねる飛び跳ねる

猫カフェの扉をあけるさびしんぼ

どしゃ降りの少年の傘開かない

シャーマンの予言通りね青い薔薇


川柳の大会に出たときは、蓮華さんが句箋に句を書いてくれるの
だそうです。


では、新春大会の様子はこの次ね。



淋しい時はえんぴつになる魔女の杖   玉

雪の日の陽だまりといるニコといる   かなえ