夕焼け

今日もいい天気でした。
ときおり夏を思わせる日差しもありましたが、
風はやっぱりさらさらとした手ざわりの秋の風。
帰りのバスから見た夕焼けがとてもきれいでした。
ところどころの厚い雲を押しのけるようにして射す夕日は、
あたりの家々を、道行く人を、やさしい茜色に染めながら
ゆっくり沈んでいきました。
こんな風に穏やかに夕焼けを見たのは、一年ぶりくらいかもしれません。
去年の今頃は、毎日が軽い絶望のなかにありました。
一年に一度の健康診断で、去年はひとつの項目に要精密検査があったからです。
そのことを告げられたとき、まさに目の前が真っ暗になりました。
なるべく早く大きな病院に行って、きちんとした検査を受けるようにと、
係りのひとが気の毒そうに言った顔を今でもはっきり覚えています。
私もその時は検査に行こうと決意しました。
その前に、どんな結果になってもいいように、とりあえず部屋だけは
片付けておかなければと、まず乱雑な部屋の掃除にとりかかりました。
掃除をしながらあれこれ暗い想像ばかりしていました。
でも、ある日ふっと思いました。
今まで私はけっこうたくさんの病気をして、何度も入院を経験しました。
その都度、体がその症状を呈してどうしても病院に行かなければ
なりませんでしたから。
だけど、今回は体のどこもなんともないのです。
むしろどんどん元気になっているのです。
痛くも辛くもないのに、検査を受けるのはどうも納得いかないと
思い始めました。
そして、検査に行かないことにしました。
不安はありました。高価なサプリメントを買って飲んだり、
健康関係の本を読みあさりました。
周囲の誰にもほとんど何も言わず、自分で思いつくあらゆることをして、
一年を過ごしました。
冷やさないないように寝るときは湯たんぽを使い、
日中はホッカイロをいくつも体にくっつけてすごしました。
そのせいか、ひと冬、風邪ひとつひくことはありませんでした。
そして今年、夏に年に一度の健康診断を受けました。
その結果が今日、来ました。
その項目は異常なし、でした。
午前中にその結果を知ったせいでしょうか。
お昼のお弁当が今までにないくらいに美味しく食べられました。
絶対に病気ではないと思っていながらも、
もしかしたらと、いつも心のどこかで考えて過ごしたこの一年は、
とても長いものでした。

何と言うか、ごめんなさい。
そして、心からありがとうの気持ちでいっぱいです。


駅長さんと雲は友達ポーと鳴く   玉

オカリナの音色まぶしき地平線   かなえ