紅絹

今日は、また秋に戻ったみたいにいいお天気でした。
空は伸びやかに青く、風もそれほど冷たくなく。
小六月と言う季語がぴったりの一日でした。

昨日の骨董屋さんに電話をして、天神様のこと聞きました。
神棚に置いてもいいそうです。
他の神様とケンカをすることはないそうです。
安心しました。
何しろ、うちには産土様のほかに3体もの神様が
いらっしゃるので、大丈夫かなって正直ちょっと
心配でした。
昨夜は、サイドボードでお休みいただきましたが、
今夜からは、神棚でゆっくりしていただきます。
さっき神棚に祀ったら、なんだかほっとしたように
見えました。私もほっとしました。
鯉のお茶碗は、戦前のものかもしれないそうです。
そう言われれば、ちょっと歪んでいる感じも、
なんだか郷愁を誘うものがあります。
私は戦前の生まれではありませんが、
たとえば、向田邦子の本やドラマで見知った世界が、
そのお茶碗に色濃く感じられるのです。
それが、なんで懐かしいのかは解りませんが(笑)
この間の土曜日にお習字のあと、いつも行くデパートに
食材を買いに行ったら、催事で
「骨董と古布から甦る創作衣服展」なるものを開催して
いました。
つい、寄ってしまいました。
特に目を引いたのが、紅絹を裂いて裂織で織りあげた生地で
作った、真っ赤なロングコート。
深い朱赤が発光しているかのように存在感がありました。
聞けば、昭和13年以前のウコンと紅花で染めた紅絹
なんだそうです。化学染料では出ない赤だそうです。
触ると見た目よりずっと軽くて、柔らかくて、
暖かそうです。その前に立ちつくしてしまいました。
「着てみませんか?」とお店のひとがにこやかに言われましたが
とんでもない話です。
着たら、脱げなくなりそうです。
お値段は300,000円です。
私には、身分不相応のものと充分承知して、
ただ見るだけにしました。
他にも、古い暖簾から作ったジャケット、コート、
紬から作ったブラウスもたくさんあって、見あきる
ことがありませんでした。
「直線の生地を洋服に裁つとき、勿体なくないですか?」と
聞いたら、陳列台を指して、見るとお札入れのようなものが
沢山あって、みんな端切れでできていて、
「こういう風にして、捨てないんですよ。」と
ふんわり、微笑まれました。
古い布から作られた洋服達も、また出番がきたとばかりに
喜んでいそうな、そんな雰囲気がその催事場に漂って
いました。
その時の、感触がまだ残っていたからかもしれませんね。
昨日の見知らぬ、初めての古道具屋さんに引き込まれたのは。
でも、あの赤には、もう巡り合えないだろうな。
紅絹の赤はやっぱり、女のひとの赤だなあと改めて
思ったものです。
新聞の今月の分は、今日校正をFAXしました。
あとは、11月29日を待つばかりです。


ナナカマドむかし話をききあきる   玉

ナナカマド負けず嫌いがなおらない   かなえ