雪に飛ぶ

今日日中は、割合穏やかでしたが、今、雪が
どんどん降っています。

北の空がうす茜色に重く広がり、そこから細かな雪が
とめどもなく落ちてくるのを見ていると、
ちょっとしんみりしてきます。
寒いです。静かです。
今夜はぐんと冷え込みそうです。

家で飼っている三羽のセキセイインコのうち一羽は、
今年で10歳になります。
人間で言えば80歳ぐらいなんだそうです。
ここ2,3年は片方の目がよく見えないらしく、
動きがぎこちないのです。
でも、部屋に放つとあちこちを得意気に飛び回るのです。
あまり籠から出したくないのですが、
羽のあるものは、やっぱり飛びたいのでしょうね。



雪に飛ぶ 飛びたかったであろう鳥   かなえ

[評]やっと放たれたのは吹雪の中。鳥は飛ぶ。必死に飛ぶ。
あんなに飛びたかったのだから行きなさい。私もあした家を出ます。
たとえ雪に倒れても、ずっとずっと一人になりたかったのだから――。

「ラ・セーヌ」の「雪」で新子先生から特選をいただいた句です。


今日、一頭の犬が雪の中をどこかへ歩いて出て行ったのだそうです。
年齢は、多分20歳を超えるか超えないくらいだと思います。
人間にすれば、90歳ぐらい?
その家では、もう一頭の子犬がいます。
その子犬がなんだか変な鳴き方をするなあと思って、飼い主が
犬達のそばにいったら、老いた犬の方がぐったりしていたとのこと。
犬の様子から、飼い主はもうダメだなと感じて、犬の鎖を
はずしてあげたそうです。
せめて、死ぬ時ぐらいは鎖から自由にしてあげようと言うことで。。。
犬は、よろばいながら、それでもゆっくり雪の道を歩いて
行ったのだそうです。
たまに、そういう話を聞きます。
死期を悟った動物が飼い主の前から姿を消すという、
野生の頃の習性。
犬のそんな習性を理解している飼い主のもとで、
その犬は幸せだったと思います。
たとえ鎖に繋がれていても、大切な存在だったと言うことを、
その犬はきちんと分かっていたと思います。
ときどき、飼い主からその犬の話を聞くときがありましたが、
けっこう、遊んであげていたみたいです。
飼い主に似て、どこかのんびりとした性格がその
話しぶりから窺えました。

犬の名前は山田さんと言いました。
名前からして、どこか犬ばなれしているでしょ。
一度会いたかったなあ。

山田さん、もう、寒くないですよね。

私もさみしいです。

それじゃ…おやすみなさい、山田さん…


ペンキ屋の犬は立派な眉を持つ   玉

E・Tの指とつんつん冬木立   かなえ